|
高校生の頃、文化祭があった。私のクラスでは映画を作る事になった。最初の頃こそ、み
んな乗り気になっていたのだが、 「部活を抜けれない」 「バイトで忙しい」 「塾がある」
だの言い出して、一人抜け二人抜けしていった。
青春ゴッコみたいなノリが大嫌いだった私は、積極的に参加する気など無かったのだが、
ヒロインに選ばれた女の子と仲良くなれるかもしれない、という単純な動機で何となく制作
メンバーの一人になっていった。
内容は学園ラブサスペンス。私の役割は主人公であるヒロインにつきまとう不良グループ
の下っ端という最悪の役と、主に撮影や編集といった裏方の仕事だった。映画といっても
ど素人の高校生が作る上に超の文字が10回位つく低予算だ、いい物ができる筈がない。
完成したのは内輪ネタばかりのチープな物語。見られた物じゃなかった。
それでもみんなは満足していた。もっとも多感な10代の頃の美しい想い出になる・・・・・・
何の事はない、結局は青春ゴッコに酔いしれていたのだ。私はと言うと、薄っぺらい友情
や連帯感に浸るでもなく、またお目当ての女の子と仲良くなれるでもなくて、しらけ切った
虚無感だけを感じていた。
ただ、今になって振り返るとつくづくこの映画作りに参加して良かったと思っている。なぜな
ら、佐野元春というミュージシャンの存在を知る事が出来たからだ。誰が決めたか忘れた
が、映画の主題歌に元春を選んだのだ。
初めて元春を聴いた時の衝撃は凄まじかった。あれから15年も聴き続ける事になろうとは。
いつまでも色褪せることなく私の中で元春は歌い続けている。
主題歌に選んだのは「ガラスのジェネレーション」という曲だ。映画のエンディングに合わせ
て元春が叫ぶ。
「つまらない大人にはなりたくない」
当時の私は、自分だけはつまらない大人にならない、そう思っていた。真面目に働く事と
子供の成長だけに価値を見出すような大人には絶対になるまい・・・そんな生き方にいつし
か父の姿をダブらせていた。
〜高校生の頃の私へ〜
すまないな、私は”つまらない大人”になってしまったようだ。
ただ、仕事と家族に生き甲斐を見出せた私は幸せ者だと思う。
そして今、誰よりも父を尊敬している。
|